私は、どうせカツラがあるからまずかったらカツラをかぶればいいやと、なかばやけくそでまかせることにしました。
薄かった部分は完全にきれいに剃り落とし、残っている毛を染め、編み込んだりパーマをかけたりして、それはどこにもないユニークなヘアスタイルが出来上がりました。
そのユニークな出来映えに、我ながら笑わざるを得ませんでした。
その日はとりあえずカツラをして家に帰ったのですが、しげしげと鏡を見ているうちに、あまりのユニークさになんとなく人に見せびらかしたい、この頭で人を驚かせたいという不思議な心理状態になり翌日、会社にはカツラで行きましたが、得意先まわりのため会社を出ると、得意先の女性たちに見せて驚かそうという衝動がグッグッ湧いてきました。
私は得意先のデパートに到着するやいなや、トイレでカツラをとりました。
カツラをはずす恥ずかしさより、みんながどんなに驚くだろうかという期待感のほうがはるかに自分の心の中で勝っていました。
トイレを出ると明らかに視線を感じました。
衣料品売り場に行ったとたん、まさに店員さんたちの驚きの歓声に包まれました。
みんなが寄ってきて取り囲まれ、それにつられてか、お客さんまでが集まってきました。
初日はどこの得意先に行っても歓声でした。
会社に戻るときはまたカツラをしました。
会社の人は私がそんなことをしているとはだれも知りませんでした。
それからというもの、得意先からはまた来てよ。
という連絡が相次ぎ、私の売上成績はしだいに上がっていきました。
また新規の得意先開拓の場合でも一度で確実に覚えてもらえるし、以前にくらべ楽に得意先を増やすことができました。
会社の人は私の成績の急上昇が実に不可解と思ったようですが、私は内心、笑いが止まりませんでした。
それまでの私、つまりカツラをしてスーツを着用して、いわゆるふつうのセールスマンの私は、お得意先から見ればたくさんの納入業者の一人であり、そのなかでも風采のあがらない、やや暗いクソ真面目な目立たない男だったように思います。
しかしカツラをはずし奇抜なヘアスタイルをした私は、異色でありユニークであり、明らかに他のセールスマンと区別されました。
またそこまで個性を発揮した勇気が、たまたまファッション業界という新しがり屋の人たちに受けたということもあるのでしょう。
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